コラム

説明義務 裁判例 獣医療訴訟

獣医師の説明義務について④

 今回は、顛末報告としての説明義務についてです。
 顛末報告とは、獣医師が、オーナーに対し診療や治療の結果等について説明・報告することです。
 裁判例(東京高等裁判所平成20年9月26日判決)でも、獣医師は、「飼い主の請求に応じ(民法645条参照)、診療経過や治療の結果について説明義務を負う」と判断されています。

 では、この顛末報告に、カルテの開示も含まれるのでしょうか。
 この点について、東京地方裁判所平成23年5月25日判決は、以下のように判断し、一定の場合にはカルテの開示義務を認めました。
①報告義務は、経過・顛末を明らかにすれば足りるものであって、カルテの記載の内容を逐一報告することは必要ではない。診療契約から直ちにカルテの開示義務があるということはできない。
②しかし、ペット動物に関する医療事故が発生したり、カルテの記載内容が問題とされたりするなど、カルテの開示・閲覧の具体的必要性があると考えられるような事情がある場合には、獣医師は信義則上、カルテの開示義務を負うことがある。

 この裁判例に従えば、例えばオーナーとの間で、診療行為についてトラブルが発生してしまっているような状況下で、オーナーから開示を求められた場合には、カルテを開示しなければならないといえるでしょう(ただし、コピー代等の実費をオーナーに請求することは可能です)。

弁護士法人浜松町アウルス法律事務所
弁護士 幡野 真弥