動物愛護法⑥~第1種動物取扱業にかかわる罰則など~
弁護士 小島梓
動物病院にて,動物を預かるペットホテルや,トリミング等のペット美容を営む場合には,基本的に動物愛護法に基づき第1種動物取扱業として届出・登録の必要があるところ,この動物取扱業に関連して,最後に,獣医師や動物病院にご注意いただきたい罰則をご紹介しておきます。
規定に反した場合の罰則については動物愛護法44条以下に定められておりますが,以下では,ものを抜粋してご紹介します。
(1)100万円以下の罰金(動物愛護法46条,48条)
第1種動物取扱業(保管業)の届け出をせずにペットホテルなどを営んだ場合などは,100万円の罰金が科されることになります。
法人の代表者,や法人の従業者が、当該行為を行った場合は法人に対しても10万円以下の罰金が科されます。このように行為主体である個人も法人も両方罰せられる規定を両罰規定と言います。昨今,法人化している動物病院も増えておりますので,注意が必要です。
そして,「罰金」と定められている以上,犯罪に対して課される刑事罰の一種であり,当該罰金刑に処せられることになると,前科がついてしまうことになります。
(2)20万円以下の過料(動物愛護法49条)
第1種取扱業者が死亡した場合に,その相続人が死亡届等を怠るなど廃業に関する届け出を行わなかった場合などには,20万円以下の過料に処せられます。
(3)10万以下の過料(動物愛護法50条)
第1種取扱業者が,事業所に氏名又は名称,及び登録番号等を記載した標識(動物愛護法18条)を掲げなかった場合には,10万以下の過料に処せられます。
故意にこのような規定違反を行う先生方はいらっしゃらないと思いますが,うっかりということはあろうかと思います。昨今のオーナーとのトラブルでは,獣医療と直接関わりのないミスを責められ,思わぬ方向に紛争が発展していくケースも珍しくありません。
また,過料は,行政罰であり,刑事罰とは異なるため,前科がつくという事態になるわけではありませんが,好ましい事態でないのは間違いありません。
先生方の場合,獣医師としての品位を損ずる行為をしたときなどには、免許を取り消し、や業務停止などの行政処分を受ける可能性がございます。(この点はまた別のコラムでもご紹介予定です)近年、罰金刑以上の刑に処せられたことにより、行政処分を受ける獣医師が増加傾にあると言われております(獣医師法8条2項)
以上も踏まえ,第1種動物取扱業を営む場合には,規定違反とならないよう,十分にご注意いただければと思います。
次回以降,動物愛護法における獣医師の位置づけ,役割,また,獣医師にお気を付けいただきたいことなどを順にご紹介していきます。