動物愛護法⑨~獣医師による通報義務(2)~
弁護士 小島梓
前回,ご説明しましたように,動物愛護法において,獣医師は、「その業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷つけられ」たと疑われる動物動物を発見した時には通報する義務があると定められています(動物愛護法41条の2)。
今回は,みだりに殺傷された動物とはどういった動物の指すのかについてご説明したいと思います。
まず,極簡単に申し上げますと,正当な理由なく,意味もなく殺されたり,傷つけられたりした動物ということになります。
ですので,逆に申し上げますと,他人に飛びかかろうとした飼い犬を止めようとして,飼い主が飼い犬にけがをさせてしまったような場合,飼い主はやむを得ず必要な措置をとったにすぎませんので,その犬は「みだりに傷つけられた」とは言えません。
この通報義務の規定は,動物愛護法44条1項とも関係しています。
動物愛護法44条1項に①愛護動物を,②みだりに殺し、又は③傷つけた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処すると定められているところ,獣医師の通報により,当該犯罪捜査の端緒として,必要な処罰を行うことで,動物に対するみだりな殺傷を防ぎたいという趣旨があるされています。
次回は,残念ながら,最近大きな問題になりつつある,動物の虐待について見ていきたいと思います。