証拠保全②
弁護士 長島功
前回の証拠保全①では、証拠保全というのは、どういう目的でなされるものなのかについて、具体例を交えてお話ししました。
今回は、実際証拠保全の決定がなされた場合、医療機関の現場でどのようなことが行われるのかについて解説したいと思います。
1 どのように知らされるのか
カルテの証拠保全は、オーナーが裁判所に申し立てを行い、裁判所が証拠保全の決定を出すことで実施されます。
実施にあたっては、証拠保全の決定書や証拠保全の申立書の副本(写し)などが、執行官という人によって届けられ、これによって病院側は証拠保全の実施を知らされることになります。
ただ、通常の裁判を起こされたときの訴状とは異なり、この証拠保全の場面では、実施当日の、しかも1時間程前に知らされます。その意味では、ほぼ抜き打ちの手続といえます。
これは、病院側にも立会の機会を保障しなければならない一方で、時間的余裕を与えることによる診療記録の改ざん等を防ぐ必要もあることに基づいています。
2 誰が立ち会うのか
証拠保全の執行で病院に来るのは、裁判官、書記官という事務を取り扱う職員、オーナー本人やその代理人弁護士です。その他、診療記録の撮影をするために、カメラマンを同行してくることが多いです。
紙の記録であれば病院のコピー機を利用させてもらって、複写するというケースもありますが、病院側が応じる義務はありませんし、最近はあまりありませんが、レントゲンフィルムだったりすると、うまく複写できませんので、通常は、専門のカメラマンを同行して、撮影により証拠保全を実施します。
3 現場で、何をされるのか
まずは病院内への立ち入りについて、許可を求められます。
その上で、立ち会う獣医師の氏名などを確認され、証拠保全の趣旨等を説明されます。また、診療簿など、決定書に記載されている対象物を提示するよう協力を求められます。
紙媒体のものであれば、それを提示することになりますが、近時増えてきている電子カルテの場合はディスプレイに表示させたり、プリントアウトした紙面を撮影することで対応します。ただ、分量にもよりますが、ディスプレイに表示した場合は、タグ等を1つ1つクリックする必要がある等、煩雑だったりしますので、特定の患畜情報を一括で印刷できる機能があれば、それによってプリントアウトすることを求められる場合もあります。
また、検証調書というものが作成され、例えば修正液の箇所や、ページ数が飛んでいる箇所等、記録に留めておくべきものがあれば、箇所を特定してその状況が具体的に記録されます。
次回は、証拠保全の実施を受けた場合、どのように対応すれば良いのか、拒否できるのか等について、解説したいと思います。