コラム

獣医療訴訟

獣医療訴訟について③損害賠償責任

弁護士 幡野真弥

 今回は、獣医師に損害賠償責任が発生する要件についてご説明します。

 ペットオーナーからの金銭請求は、法的には「不法行為に基づく損害賠償請求権」や「診療契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権」として構成されています。

これらの権利が発生するためには、以下の要件が必要です。

① 診療契約の成立
② 獣医師の注意義務の存在とその義務違反(過失)
③ 因果関係
④ 損害の発生

 これらの要件を満たす場合に、「医療行為にミスがあり、そのミスが原因で損害が発生した」という事実があるといえ、法的に、ペットオーナーからの請求権が発生します。厳密には、要件はもっと細かく分析する必要があるのですが、あまり細かい話になり過ぎますので、省略します。

 これらの要件は、ペットオーナー側が主張立証しなければなりません(原告の主張責任、立証責任)。もっとも、診療内容はペットオーナー側ではわからないことが通常ですので、獣医師側としても、診療当時に、実際にペットの状態がどのような状態であり、どのような検査や治療を行ったかを主張していく必要があります。
 次回以降のコラムで、要件①~④について説明していきます。