コラム

獣医師に対する行政処分

獣医師に対する行政処分⑤~獣医師法8条2項の要件(4)~

弁護士 小島梓

 引き続き、獣医師法8条2項3号に規定されている要件である、獣医師法5条第1項第1号から第4号までの1つに該当するときの内容についてご説明します。今回は、獣医師法5条第1項3号「罰金以上の刑に処せられた者」についてです。

 獣医師法8条2項と合わせ考えれば、罰金以上の刑に処せられた者も行政処分の対象となることになります。

(1)「罰金以上の刑」とは
 まず、罰金以上の刑に該当するのは、罰金、禁固、懲役、及び死刑を指します。拘留や刑事罰における科料、行政罰における過料などは該当しません。

(2)「罰金以上の刑」が定められている関係法令
 刑事罰と聞くと何となく刑法を想像される先生も多いと思います。窃盗、詐欺、殺人などがニュースでもよく耳にする犯罪ではないでしょうか。しかし、獣医師業務に誠実に取り組んでおられる先生方がこのような刑法上の罪を犯す可能性は極めて低いと考えています。その意味では遠い世界の話ではないかと思います。

 ただ、罰金以上の刑事罰が定められている法律は刑法だけではありません。

 まず、自動車に乗られている先生に気を付けていただきたいのは交通事故です。事故態様によっては、刑法違反、道路交通法違反となり刑事罰が科される可能性があります。

 さらに、獣医師法、獣医療法、動物の愛護及び管理に関する法律(いわゆる動物愛護法)など獣医師業務、ペットホテル業務などとかかわりの深い法令にも実は罰金以上の刑事罰が定められています。これらの関係法令については、ちょっとした勘違いや油断で結果法令に反していたということがあり得ます。

 そのため、まずは、関連法令については今一度規定を見直していただき、違反行為とならないよう慎重な対応をお願いいたします。

 なお、万が一、罰金以上の刑に処せられうる事態になってしまったときの対応は別途ご説明します。

  次回は、獣医師の関連法令に定められている罰則について簡単に見ていきたいと思います。これを機会に今一度ご確認をお願いいたします。