コラム

獣医療訴訟

獣医療訴訟について⑩損害

弁護士 幡野真弥

 獣医師に賠償責任が発生するには、ペットオーナーに「損害」が発生したことが必要な要件です。
 
 具体的には、ペットが死亡した場合の慰謝料や、後医の診療に要した費用などが、損害として求められています。
 この損害の金額が、獣医師が賠償責任を負う金銭の額と等しくなります。
 
 なお、過失ある診療を行った獣医に支払った治療費の返還を求められることがありますが、原則的に治療費は損害とは認められません。
 また、ペットの価格(財産的価値)が、損害として主張されることがありますが、ペットの価格は損害として認められることは多くありません。ただし、ペットオーナーが商業ブリーダーの場合や、ショーで入賞したようなペットの場合は、財産的な価値があるとして、損害になることがあります。

 そのほか、訴訟となった場合、弁護士費用が損害として認められています。ただし、その金額は、その他の損害の総額(慰謝料や後医の治療費の総額)の1割程度です。ペットオーナーが弁護士に支払った報酬実額ではありません。