獣医師のカルテについて⑧~医療記録の保管~
弁護士 小島梓
獣医師の先生方からよく「カルテや手術承諾書は何年保存しておけばいいですか?」「紙媒体のものをPDFにして保管してもいいですか?」といったご質問を受けます。
そこで、今回は、改めて、動物病院における適切な医療記録の保存方法や管理期間についてご説明していきたいと思います。
1.カルテの保管義務
獣医師には、3年間のカルテ保管義務が課せられています ( 獣医師法21条2項、獣医師法施行規則11条の2。ただし牛、水牛、鹿、めん羊、山羊は8年間です。)起算日は、法律上明記されているわけではありませんが、当該動物の最後の診療日と考えられています。(「獣医師のカルテについて①カルテの記載事項と保存期間」も合わせてご覧ください。)
2.適切なカルテ、及び承諾書の保管期間
まず、当方の意見を先に申し上げますと、それぞれ、以下の対応をとっていただけるとよろしいかと思います。
(1)紙カルテの場合
〇当該動物の最後の診療日から起算して10年間はカルテ・承諾書を共に保管(なお、保管スペースの問題がある場合は、途中でPDF化して電子データに切り替えていただくのも一つの方法です)
(2)電子カルテの場合
〇承諾書の原本紙媒体保管は、3年間
〇当該動物の最後の診療日から起算して10年間はカルテ・承諾書の電子データを共に保管
上記のとおり、法律上明確に定められているのは3年の保管義務なのですが、証拠としての重要性等を考えますと、当事務所としては、可能であれば20年の保管、最低でも10年程度は医療記録を保管していただくことをお勧めしています。
次回は、当事務所が保管期間として10年程度をお勧めする理由をご説明します。