懲戒処分④~手続の相当性~
弁護士 長島功
懲戒が有効となるための要件として、手続の面についても触れていこうと思います。
就業規則で懲戒事由とともに、懲戒をするための手順について規定がなされていることが多いですが、それが定められているにもかかわらず、それを無視して懲戒処分を行うと懲戒権の濫用となり、基本的には当該懲戒処分は無効となります。
では、手続を定めなければよいのではないかと思われるかもしれませんが、仮にそういった場合であっても、最低限本人に弁明の機会は付与すべきです。
裁判例の中には、弁明、弁解の手続規定がない場合に、「弁解聴取の機会を与えることにより、処分の基礎となる事実認定に影響を及ぼし、ひいては処分の内容に影響を及ぼす可能性があるときに限り、その機会を与えないでした懲戒処分が違法となる」とし、弁明の機会を与えないでした懲戒が違法になる場合を限定的に考えたものがあります。
しかしながら、仮に懲戒処分を行うとしても、スタッフに弁明の機会を一切与えることなく処分をすることは、処分に対する不満が残りやすく、紛争に発展しやすいですし、今後同じような懲戒事由を繰り返させないためにも、なぜそういった問題行動に及んだのかを直接スタッフより聞き取り、それに対して、必要に応じて指導も加えるといったやり取りを経ての処分の方が、より良い動物病院運営につながります。
もちろん、どのタイミングで本人に弁明の機会を与えるか等、慎重に行うべきケースもありますので、懲戒に向けて手続を進めることを検討されている場合には、事前に弁護士にご相談されることをお勧めします。