コラム

獣医師法 裁判例 獣医療訴訟

カルテの改ざんについて、慰謝料100万円が認められた裁判例(人医)

弁護士 幡野真弥

 獣医師は、カルテの作成や保存が義務付けられています(獣医師法21条)。
 獣医療のトラブルがあった場合、カルテの記載は重要な証拠となります。カルテは、専門家である獣医師が日常的に記載するものですので、裁判となった場合でも、裁判所はカルテの記載内容については信用が措けるものと扱っています。

 一方で、カルテを改ざんした場合は、証拠として価値が低くなり、信用性が否定され、また、医療過誤とは別の不法行為となることがあります。

 東京地裁令和3年4月30日判決は、人の白内障手術に関する事案です。
 この裁判では、説明義務違反等も争点となりましたが、カルテの改ざんも争点となりました。

 裁判所は、改ざんの事実を認定し、

「医師は,患者に対して適正な医療を提供するため,診療記録を正確な内容に保つべきであり,意図的に診療記録に作成者の事実認識と異なる加除訂正,追記等をすることは,カルテの改ざんに該当し,患者に対する不法行為を構成するというべきである。」

 と判断を示したうえで、本件は改ざん部分が悪質であり、改ざん箇所も多数に及ぶとして、慰謝料としては高額な金額である100万円を認めました。

 今回の裁判例は、人の医療に関するものですが、獣医療に関するトラブルを処理する上でも、参考になるものと思います。