コラム

労務問題

スタッフの業務上のミスについて

弁護士 長島功

 スタッフ獣医師や、動物看護師、受付スタッフなどに業務上のミスが発生することはあるかと思います。
 ミスは誰にでもあり得ることですから、そういった場合にいきなり懲戒処分を行うというのは望ましくはありません。
 また、逆になぜそのようなミスが起きたのかを曖昧にしたり、実質的な再発防止に取り組まないということも色々な意味で望ましくはありません。雇用主である獣医師の先生方からのご相談をお聞きしますと、やはりお忙しいく時間が取れなかったり、スタッフとの関係性を気にされたりして、本人への注意指導や再発防止に向けた対策の検討が後回しになっていることがたまにあります。

 そこで、今回はこのような業務上のミスが起きた場合について、解説していこうと思います。

1 注意指導
 冒頭記載しましたとおり、ミスの内容にもよりますが、一般的には、いきなり懲戒処分を行うのではなく、注意指導から始めるべきです。
 問題はその注意・指導の中身ですが、単に叱責するといった内容ですと、何ら再発の防止につながりませんし、本人のためにもならず、スタッフのモチベーションを下げるだけの結果になります。
 また、ミスが起きた原因が動物病院側の体制にある場合も考えられ、そのような場合、叱責だけで終わらせることは業務改善の折角の機会を失うことにもなってしまいます。
 さらに、再発防止に向けた意味のある注意指導が何もないと、本人に改善の機会を与えていないとして、将来懲戒処分を行いにくいという側面もあります。
 そのため、なぜそのようなミスが起きてしまったのか、まずは原因を本人と一緒に考える姿勢を取り、例えば所定の手順をマニュアル化することにより防げないかなど、再発防止策を検討するということをしましょう。
 その上で、スタッフ自身にも問題の一端があるのであれば、併せて本人に向けて注意・指導を行うようにしましょう。

2 繰り返される場合
 ただ、中にはまたミスが繰り返されてしまうケースはあるかと思います。特に同じ原因に基づくミスの場合には、同じ注意・指導を繰り返すだけでは、もはや効果が見込めないかもしれません。
 そこで、こういったケースでは、懲戒処分を行うことも検討すべきかと思います。
 処分の種類は軽いものから始めて行くことが基本ですが、当該スタッフの院内での立場やミスの内容、それまでの注意指導歴、ミスによって動物病院に生じた損害の程度、本人の反省の態度などを総合して、場合によっては、いきなり重い処分をすべき場合もあるかと思います。ただ、懲戒処分はトラブルの原因になりやすいものですので、特に重い処分をしようとする場合は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

3 スタッフの能力に問題がありそうな場合
 ミスの内容によっては、スタッフの能力に大きな問題がありそうなケースもあります。
 特に動物病院は医療機関として、小さなミスが命取りになることも考えられるため、その内容や程度如何では、もはや雇用を継続していくことが難しいという場合もあるでしょう。
 そういった場合は、懲戒処分というよりは、就業規則の定めにしたがって、能力不足を理由に普通解雇をするということも考える必要があります。
 ただ解雇は重大な不利益を及ぼすものですから、この場合も一度弁護士に相談されることをお勧めします。