コラム

説明義務 オーナーとのトラブル

術後の合併症について

弁護士 長島功

 術前にリスクなどの説明をする際、術後における不可避の合併症についてお話しされる機会はあろうかと思います。ただ、オーナー様は意外と合併症がどういうものなのかを理解しておらず、それが現実化したときにトラブルになるケースがあります。
 そこで、術後の合併症の説明をする際にご注意いただくことをいくつかお話ししたいと思います。

1 説明内容について
 合併症という言葉を出してご説明をされることはあるかと思いますが、オーナー様はこの単語は聞いたことがあるものの、そもそも、それがどういうものなのかを誤って理解していることがあります。
 そのため、予想される個々の合併症を詳しく説明されることも大切ではあるのですが、広く術後の合併症というものが、どういうものなのかを説明することもトラブルの防止には必要です。
 具体的には、常に起こる訳ではないものの、どんなに注意をして処置をしても、一定の確率で起きるもので、確実に避けるということはできないということはご説明いただいた方が良いです。
 このあたりの説明が不足しますと、手術に引き続き起きるものではあるので、オーナー様からみると、手術に起因して起きてしまったように見えてしまい、医療ミスではないかとの疑念が出かねません。実際に、正確に合併症の説明をしているときでさえも、オーナー様の理解が追い付かずに、トラブルになるケースはありますので、ここは意識的にご説明いただいた方が良いかと思います。
 また、口頭だけではなく、それを書面でも説明しておくとオーナー様も理解しやすく、紛争の防止にもつながります。弊所では、獣医師の先生方のご希望も踏まえて、説明・同意書を作成することもしておりますので、ご興味がありましたら、お問合せください。

2 トラブルになりやすい説明
 上記のように術後の合併症を医療ミスとオーナー様は捉えがちですので、そう誤解させてしまいやすい発言も控えた方が良いです。
 よくあるのが、不安になるオーナー様に対して、安心感を与えようと「注意してやりますね」「慎重にやりますから大丈夫です」といった声を掛けることがありますが、これは注意すれば防げる、慎重にやれば防げるものという理解につながり、合併症が起きてしまったときには、注意しなかったのではないか、慎重にしなかったのではないかといった思考につながりやすいです。
 ですので、合併症の説明をする際には、これらの言葉を使った説明は控えた方が良いです。