処置のリスクを説明することで解決した事例
事案の概要
猫のオーナーから動物病院に対して求められた処置が、その必要性は低い一方で、大変リスクのあるものでした。そこで、動物病院からオーナーに対して、処置を行う必要性は低く、リスクが高い状況なので、処置を実施しない方が良いのではないかと説明をしました。しかし、オーナーからはリスクは承知したので、処置を実施してほしいと懇願され、これまで治療をしてきた猫だったので、困った動物病院より、対応についてご相談を受けました。
結論
当事務所より、リスクを具体的に記載した書面を用意し、その内容をオーナーに確認してもらい、それでもオーナーが処置をしてほしいということであれば、実施するということでどうかというアドバイスを行い、書面を作成してお渡ししました。その結果、オーナーは処置を実施しないという判断をするに至り、終了となりました。
最初に、担当獣医師より話を伺うと、獣医師として最悪猫が死んでしまうリスクもあると考えていたのですが、オーナーに対しては、「何が起こるかわからない」というような抽象的な説明にとどまっていました。これに対して、オーナーは承知したと述べているにすぎず、具体的に何が起こるかわからないまま話が進んでいる状況がうかがえました。
これは、動物病院における処置に関しては往々にして起こりやすい行き違いです。獣医師の中では本件のように「死亡する可能性」という具体的なリスクが分かっているのですが、それを具体的な言葉で表現することなく、抽象的に「最悪の事態」「何が起こってもおかしくない」などと表現してしまい、オーナーはまさか死亡する可能性があるとは思わず処置を受けてしまうということが珍しくありません。
何事も起きなければ、問題なく終了することもあるのですが、実際にペットが亡くなってしまったりすると大きな紛争になりかねません。
逆に本件のように、事前にしっかりと具体的にリスクを伝えることで、オーナーとの行き違いがなくなり、オーナーが冷静な判断をしてくれることで、リスクを回避することもできます。
獣医師にとって、リスクが高ければ高いほど、具体的に伝えることを躊躇するお気持ちもよくわかるのですが、オーナーが後悔しない選択をするためにはそれが必要なこともあります。伝えるタイミング、伝え方、表現など適宜アドバイスいたしますので、ご相談ください。
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