仔馬は誰のもの?(東京地裁平成4年11月18日判決)
弁護士 幡野真弥
馬の所有権が争われた裁判例である東京地裁平成4年11月18日判決をご紹介します。
牝のサラブレッドの所有者である原告は、競走馬を生産し飼育する牧場主であった被告に、種付けを目的として牝馬を預託しました。
原告の主張によれば、産まれる子馬は原告と被告との共有とする合意をしたにもかかわらず、被告はは子馬(牝馬)を無断で売却したので、損害賠償を請求するというものでした。
これに対して、被告は、産まれる子馬は、一頭目が牝馬であれば被告の単独所有で、二頭目から共有とするという合意内容であったと主張して争いました。
裁判では、原告と被告が、産まれる子馬の所有関係について、どのように合意したのか、その合意の内容が争点になりました。
裁判所は「原告と被告との間で契約書等の文書は何ら作成されておらず、産まれる子馬の権利関係について、当事者間でいかなる合意が成立したものか、にわかに決し難いところであるが、初めに、双方の主張それ自体が合理性を有するか否かについて考察する。」と述べた上で、原告・被告の主張それぞれについて合理性がないと排斥し、「産出子馬の権利の帰属に関して明確な約定がされなかった本件においては、当事者の意思を合理的に解釈して合意内容を確定するほかはないところ、以上検討したところに照らすと、本件預託時において、原告と被告との間では、産まれる子馬の権利を双方の投下資本の割合によって共有するとの黙示的な合意が成立したものと認めるのが相当である。」と判断しました。
そして、具体的には、原告と被告との共有持分の割合は、1対4とみるのが相当であり、原告と被告は、この割合によって仔馬を共有していたと判断しました。
なお本事案は控訴され、控訴審で和解が成立したようです。