鳥の治療に係る慰謝料請求を受けた事例
事案の概要
動物病院で鳥の治療を行うために、鳥をかごから出して診察台に移動させようとしたところ、鳥が暴れだしました。獣医師の方でできる限りの対応をしましたが、最終的には心停止となり、亡くなってしまいました。
その後、オーナーより、獣医師が不用意に鳥に触ったせいで亡くなったなどの理由により慰謝料請求がなされるにいたりました。
獣医師としては、鳥の治療に関して、できる限りの対応していたため、慰謝料を支払う必要があるのか否か、今後どう対応すべきか迷い、相談にいらっしゃいました。
結論
状況を伺ったところ、獣医師は既にオーナーに対して獣医師自身でできる説明は行っており、これ以上獣医師にて対応は難しいと判断し、当職が受任しました。
その後、当職にて本件では治療のために鳥に触る必要があったこと、本件の鳥に関しては、触ることによってショック死することは予想できなかったこと、ゆえに、獣医師に過失はないことなどを記載した書面を作成し、オーナーに送付しました。オーナーからはそれ以降、慰謝料請求等がなされることはなく事件は終了となりました。
確かに、鳥については、獣医師が触ることによってショック死してしまう可能性があります。しかし、だからと言って全ての鳥について触らずに治療しなければいけないというわけでもありません。結局は、鳥の種類、治療対象の鳥の性格や病歴、鳥の症状など様々な観点から、触らずに視診だけで治療を行うのか、触って治療を行うことを優先すべきかを判断することになると思います。
そのため、法的な観点から慰謝料の発生根拠となる注意義務違反があるか否かの判断をする際も、個別案件の具体的事情を考慮することになります。
鳥は、治療にあたって他の動物と異なる注意が必要であったりするため、獣医師自身で、自分の行ったことが法的に注意義務違反になるのか、過失有りという判断になるのか否か判断することは困難だと思います。対応に迷われた際には、早い段階で一度ご相談いただければ幸いです。
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