コラム

裁判例

動物の虐待等の刑事裁判例

弁護士 幡野真弥

 京都地裁令和 5年 1月31日判決をご紹介します。 
 2か月足らずの間に5匹の子猫をみだりに殺したり、傷つけたりしたという事案でした。
 被告人による虐待の内容は、猫の爪を爪切りで深く切断して出血させる、猫の舌を切断する、猫のひげをたばこの火で焼損させる、猫の尻尾をつかんで振り回し尾椎を亜脱臼させる、というものでした。 

 裁判所は、「被告人は、2か月足らずの間に5匹の子猫をみだりに殺したり、傷つけたりしており、常習的犯行である。これらの犯行により、動物を愛護する気風は大きく害されている。」としつつ、「被告人は、今後、動物を一切買わないと誓っており、実父も被告人の更生を支援する旨約束していること、被告人に前科はないことなど被告人のために酌むべき事情もある。」
 「そこで、本件については、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。そして、その更生環境にはなお不安が残ることから、その猶予の期間中、被告人を保護観察に付することとする。」と判断し、懲役1年6月、保護観察付き執行猶予3年とされました。 

 獣医師は、みだりに殺されたと思われる動物の死体や、みだりに傷つけられ、虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならないとされています。

 通報先については、環境省が作成した一覧があります。

 ただ、実際にこの一覧に記載のある通報先に連絡しても、「通報先はここではない」などと回答されてしまったという事例も聞くことがあります。そういった場合は、環境省の作成した一覧に記載があることを説明したり、それではどこに連絡すればよいのか確認したりするなどして、通報手続きを進めていく必要があります。