動物看護師について⑪~今後の展望~
弁護士 小島梓
今回は,愛玩動物看護師法についてまだ曖昧になっている部分,今後どのような展開が予想されるのかなど,確認しておきたいと思います。
(1)愛玩動物看護師法の対象
既にお伝えした通り,愛玩動物看護師法において,対象は愛玩動物に限られ,牛,馬等のいわゆる産業動物は対象に含まれておりません(本連載「動物看護師について②③」も併せてご参照ください)。
産業動物については、畜産業者が飼育に関して一定の知識有していることが多く、愛玩動物のように看護師の支援が強く求められる状況にはなっていないという事情がその背景にあると言われております。
そのため,将来的にその需要が高まれば産業動物等,今回対象外となっている動物も対象に入ってくる可能性はあります。
(2)「獣医師が行う指示」の在り方,及び「診療の補助」の具体的内容
愛玩動物看護師法2条2項により,「獣医師の指示の下に行われる愛玩動物の診療の補助」を動物看護師が行いうることになりました(本連載「動物看護師について④」も併せてご参照ください)。
この「獣医師の指示」の方法について,獣医師がその場にいる必要があるのか、あるいは電話やSNS等での遠隔指導を含むのか,また,獣医師の指示が包括的なもので足りるのか具体的な指示が必要なのかなどは,今後,引き続き検討され,農林水産省局長通知等により明らかにする予定とされています。
検討する際には,個々の行為の愛玩動物の身体への影響、難易度等が考慮されることが想定されています。基本的には,人間の医師が看護師に対して行う指示の在り方が参考にされる予定です。
診療の補助の具体的な内容についても基本的に同様です。
こちらは,現状,農林水産省のHPで公開されている情報から,採血,投薬(経口など),マイクロチップの挿入、カテーテルによる採尿などが含まれることは予想されます。中でも,令和元年の動物愛護管理法の改正により犬・猫についてはマイクロチップの装着が義務化されたため,当該挿入にかかる業務が増大し,愛玩動物看護師の主要な仕事の一つになっていくのではないかと思われます。
さらに,愛玩動物看護師法の趣旨に鑑みれば今後さらに含まれる業務は増えていく可能性があります。
(3)まとめ
今後も,動物看護師に係わることや,愛玩動物看護師法に関して上記の検討中の事項等に動きがあれば,またご紹介していきたいと思います。