コラム

動物愛護法

動物愛護法⑪~獣医師による通報義務(4)~

弁護士 小島梓

 これまでご紹介してきた通り,2019年動物愛護法改正により,みだりに殺傷されたり,虐待されたりした疑いのある動物を発見した時,獣医師は「遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない。」,すなわち通報義務があるということになりました(動物保護法41条の2)。

 そのようなことがなければ,一番良いのですが,残念ながら起こりうる事態ですので,実際に発見した時の動きを確認していただければと思います。

 環境省の案内なども参照しますと,
①動物の虐待等を発見したときは、発見場所の地方自治体(都道府県・指定都市・中核市)の連絡先もしくは警察に相談または通報していただく
②虐待の確証が得られない場合であって、そのおそれがある場合については地方自治体に相談または通報していただく
ということになります。

 地方自治体ごとの連絡先一覧は,環境省のHP「地方自治体動物虐待等通報窓口一覧」にてご確認ください。警察署に関しては,基本的に動物病院の最寄りの警察署を調べて通報いただければ大丈夫です。

 獣医師の先生方が虐待された動物を発見する可能性が高いのは,ペットオーナーが治療のために動物を病院に連れてきたときになると思われます。

 その場合,通常は,先生方として所見や,ペットオーナーの様子から「ひょっとして…」と思うが,確信まではないというケースがほとんどではないでしょうか。

 この段階で,オーナーも悩まれている様子などがあれば可能な話を聞いていただくことなどは必要かと思いますが,ペットオーナーは病院の大事なお客様でもあり,必要以上に問いただすことも困難です。間違いだった場合は信頼関係にも問題が生じてしまいますので,最初から確信が持てるまで追求するというのも現実的ではありません。

 そのため,基本的には,初めて虐待かもと気づかれた段階では,一旦地方自治体の相談窓口に相談をしておき,必要な指示,アドバイスを受け,その後同じペットオーナーが繰り返し虐待の跡のある動物を連れてくるなどの事態になり,間違いないとなった段階で,警察に通報という流れでよろしいかと思います。

 次回からは,2019年改正における大きなポイントの一つであるマイクロチップの問題を取り上げていきたいと思います。