動物愛護法⑫~マイクロチップ装着(1)~
弁護士 小島梓
動物愛護法の2019年改正において,獣医師にも影響を与える大きな改正ポイントの一つに,マイクロチップの問題があります。今回からこのマイクロチップにかかわる規定,改正について見ていきたいと思います。
(1)マイクロチップに関する規定の施行
2019年改正において,動物愛護法に第4章の3(動物愛護法39条の2以降)を新設し,マイクロチップに関する規定を置くことになりました。
当該マイクロチップに関する規定については,準備期間の問題などもあるため,改正法の公布から3年以内に施行するものと定められており,具体的には2022年6月1日に施行されることになっています。そのため,現在は,まだ施行前であり,効力は発生していない状態です。
(2)マイクロチップの装着に関する改正ポイント
マイクロチップ装着に関する改正のポイントは主に以下の2点になると思います。
ア 犬猫等販売業者に関してマイクロチップ装着が義務化(動物愛護法39条の2第1項)
犬猫等の販売業者に関しては,原則として取得した日から30日以内に,犬または猫に対してマイクロチップを装着しなくてはいけません。
ただし,マイクロチップを装着することにより当該犬又は猫の健康及び安全の保持上支障が生じるおそれがあるときなどは,不要とされています(同項目但書)
イ 犬猫等販売業者以外の犬猫の所有者に関するマイクロチップ装着について
犬猫等販売業者以外の犬又は猫の所有者は、その所有する犬又は猫にマイクロチップを装着するよう努めなければならないという形で,その装着について努力義務が課される形になりました(動物愛護法39条の2第2項)。
(3)マイクロチップ取り外しの禁止
何人も、犬又は猫の健康及び安全の保持上支障が生じるおそれがあるときなどを除き、当該犬又は猫に装着されているマイクロチップを取り外してはならないとして,マイクロチップが一度装着された後は,犬猫等の販売業者か否かにかかわらず取り外しを禁止する旨も規定されることになりました(動物愛護法39条の2第4項)
以上,直接獣医師にかかわる規定ではありませんが,次回,ご説明するように間接的に影響が出うるものですので,一度ご確認いただく必要はあろうかと思います。
次回は,獣医師に関する規定,マイクロチップ装着に関する動物病院のかかわり方などご紹介します。