獣医療広告について⑤~広告には当たらないとされる例(2)~
弁護士 小島梓
今回も、「獣医療広告について④~広告には当たらないとされる例(1)~」に引き続き、通常は広告とはみなされないものについて見ていきます。ただし、前回同様、実質的には以下の広告の定義に当てはまるとされる可能性もあるため、常に意識していただければと思います。
(1) 随時に又は継続してある事項を広く知らしめるものであり、
(2) 次のアからウまでの全ての要件に該当するとペットオーナー等が認識できるもの
ア 誘引性:飼育者等を誘引する意図があること
イ 特定性:獣医師の氏名又は診療施設の名称が特定可能であること
ウ 認知性:一般人が認知できる状態にあること
⑤ペットオーナー等からの申出に応じて送付するパンフレット、電子メール等
ペットオーナー等からの申出に応じて送付するパンフレット、電子メール等は、当該施設の情報入手を希望した特定の個人にのみ送付するものであり、一般人が認知できる状態にはならないので、「認知性」の要件に該当するものではなく、通常、広告とはみなされないと考えられています。
ただし、希望しているか否かにかかわらず、不特定多数に向けて送付されるパンフレット、ダイレクトメール等については、「認知性」を有するものとして広告に該当する可能性が出てきますので注意が必要です。
⑥診療施設の職員募集に関する広告
診療施設の職員の採用を目的とした、いわゆる求人広告は、診療施設の名称や連絡先等が記載されており、一般人が認知することも当然できますので、認知性の要件も満たすものと思われますが、ペットオーナー等を誘引するものではないことから、「誘引性」を通常は有していません。そのため、原則として広告とはみなさないと考えられています。
⑦インターネット上のホームページ
インターネット上の診療施設のホームページは、当該施設の情報を得ようとの目的を有する者が、URLを入力したり、検索サイトで検索した上で、閲覧するものであり、通常は「誘引性」を有さないため、原則として獣医療法上の広告とはみなされないと考えられています。
しかし、インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや広告サイトで表示されるものなど、実質的に上記全ての要件に該当する場合には、広告とみなされますので注意が必要です。
⑧行政機関の公報又はポスター
地方公共団体等の行政の施策推進のために作成されたもの(行政機関から施策の公報を委任された者により作成されたものを含む。)は、特定の獣医師又は診療施設へ誘引するものではないことから広告とはみなされないと考えられています。
次回からは、獣医療広告に関する規定、獣医療法17条1項を詳しく見ていきたいと思います。