動物病院のハラスメント問題
弁護士 小島梓
昨今、動物病院の院長先生より「動物看護師から、獣医師よりパワハラを受けていると相談された。どう対応したらよいか」と言った趣旨のハラスメントに関するご相談を受けることが増えています。これが獣医師同士であったり、動物看護師同士であったりそのシチュエーションは様々ですが、共通するのは、院長である獣医師が何らかの対応をする必要が出てくるということです。
そこで、本コラムにおいて、ハラスメントに関する基礎知識や、動物病院が講ずべき措置、対応方法などをご紹介していきます。
現在、様々なハラスメントが問題となっていますが、特に大きな問題となり、法的整備が進んでいるのは以下の三つのハラスメントです。
下記各ハラスメントについては、各法律により事業主の措置義務が定められるに至っており、詳細な対策等を示した指針もそれぞれ出されています。
スタッフを雇用する動物病院も基本的には措置義務を課された「事業主」に該当しますので、各法律に従って措必要な措置を講じていく必要があります。抽象的でわかりにくい部分もありますが、まずは、各指針が定めている定義を確認してみてください。
(1)パワーハラスメント(=パワハラ)
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2第1項)
(2)セクシュアルハラスメント(=セクハラ)
「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条1項)
(3)マタニティーハラスメント(=マタハラ)
①妊娠・出産等に関するハラスメント
「職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条の3第1項)
②育児休業・介護休業等に関するハラスメント
「職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されること」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律25条1項)
まずは、最近法改正など動きがあった「パワハラ」から見ていきたいと思います。