コラム

裁判例

盲導犬死亡の損害

弁護士 幡野真弥

 名古屋地裁平成22年 3月 5日判決をご紹介します。
 横断歩道を横断中、交通事故に遭い、死亡してしまった盲導犬の損害が争点になった裁判例です。

 裁判所は、盲導犬の死亡についての損害は、死亡時における客観的価値によるべきであり、視覚障害者が自立を目指すことをも可能とする社会的価値を有する盲導犬の価値を客観的に評価する場合には、当該盲導犬の育成に要した費用(453万1037円)を基礎に考えるのが相当であるとしました。

 そして、盲導犬の事故当時の客観的価値について、盲導犬の活動期間を10年とみた場合の、交通事故時における盲導犬の残余活動期間である5.13年を基礎として、さらにそこから、盲導犬の一般的、客観的な技能の向上も考慮して、損害は260万円と算定しました。

 家庭内でペットとして飼育されている犬の財産的価値が争点になった裁判例は多いですが、盲導犬のように、特殊な技能をもった犬の価値が争点になった裁判例は珍しいです。